歯の本数が多い人ほど長生きできる

野生動物なら、歯を失えば、エサを取る能力やエサを咀疇する能力が低下します
それは死に直結する可能性もあります
一方、人間は、食べ物を食べやすくする工夫をしたり、義歯など歯科治療で補うことができるため、歯を失ったとしても端的に生命の危機に瀕するわけではありません
しかしながら、歯の健康状態が全身の健康や寿命を決めるという確信が、歯科医師の間には広まりつつあります
「歯が残っている本数が多い人ほど寝たきりになる割合が低く、健康で長生きする」それを裏付ける論文が、スウェーデン、イタリア、アメリカ、日本など世界各国で発表されているからです
また、80歳で20本以上健康な歯があると、総じて身の回りのことが自分でできる、歩けるなどの生活自立度が高いという報告があります
歯の残存数が多いと咀疇機能が衰えず、それが健康長寿を後押しします
一方、歯が少ないと咀喀能力が低下し、全身の健康にも悪い影響が出ます
一定数以上の歯が抜け落ちたことによって、死亡の危険性(死亡リスク)が上がることや、認知症や要介護になったりする確率が高くなることは、データではっきりと示されています
80歳男女を対象に、「咀疇能力」と寿命の関係から見た福岡県での研究があります
用意されたのは、噛みにくい食材から噛みやすい食材まで段階的に分けた15種類
ピーナッツやたくあんなどは噛みにくい食材に入り、ごはんやうなぎの蒲焼きなどは噛みやすい食材に入ります
実験結果を見てみると、死亡のリスクは咀疇機能の有無に大きく左右されているのがわかります
5種類すべてを噛める人を「咀疇能力が高い人」、9~14種類噛める人を「中くらいの人」、4種類以下しか噛めない人を「低い人」とした場合、4年間の追跡調査でわかった死亡のリスクは、咀噛能力が低い人は高い人の2・6倍、中くらいの人は高い人の1・2倍高いという結果になりました
また5.5年間でみると、咀噛能力の低い人の死亡リスクは高い人の3・6倍にもなったのです
歯の「本数」と死亡リスクの関連性もみていきましょう
80歳における歯の数が「20本以上ある人」「10~19本の人」「1~9本の人」「1本もない人」とグループ分けして5・5年後の死亡リスクを比較すると、10~‐9本の人は20本以上ある人の1・2倍、1~9本の人は1・8倍、0本の人では1・9倍でした
つまり1本もない人と20本以上歯がある人とでは、およそ2倍の死亡リスクがあるということです
また、同じ調査では咀曙能力が高い人に比べて低い人が、寝たきりや要介護状態になるリスクは、なんと7・5倍もあったのです