「カリエスリスクテスト」を受けよう


1日の歯磨き回数は、平均してフィンランド人より日本人のほうが多いというデータがあります
しかし、実際に虫歯が多いのは日本人
回腔ケアのエキスパートたちによる指導や定期的なメンテナンスを受けているフィンランド人と受けていない日本人の差でもあるのですが、 一生懸命歯磨きしても虫歯になってしまう人、歯磨きがいい加減でもなぜか虫歯にならない人がいるのは事実です
いわばその「虫歯のなりやすさ」を科学的に知るための手がかりになるのが、スウェーデンで開発された「カリエスリスクテスト」です
虫歯は複合的な原因でできることがわかっていますが、「脱灰」と「再石灰化」がどんなふうに行われているかのバランスを分析することで虫歯の発生リスク(危険度)がわかります
検査項目は全部で八つ
ミュータンス菌の数、ラクトバチラス菌の数、飲食の回数、プラークの蓄積量、フッ素の使用状況、虫歯の経験(DMFT指数)、唾液の量、唾液の緩衝能(酸性に傾いた日中を中性化し、「再石灰化」を促す力)です
項目が多いため、ケアに関する説明などはやや面倒に感じるかもしれませんが、多面的な対策が打てるのできちんと行えば予防効果は絶大です
ミュータンス菌とは虫歯のきっかけを作る菌、ラクトバチラス菌とは虫歯を進行させる菌のことです
これらの菌に関する危険度のスコアは、「コロニー」と呼ばれる細菌の塊 瑠の量で見ます
1ミリリットルの唾液中に含まれるコロニーの数によって、スコア0~スコア3の4段階で判定します
コロニーは大きく固まっているほど歯ブラシなどで除去しやすく、細かくみっちり付着しているほど落としにくいわけです
ミュータンス菌は乳児期に唾液を通じて感染することが多いと述べましたが、 一度感染するとプラークの中でコロニーを作り、それを覆うようにバイオフィルム(歯の表面を被う細菌の膜)を形成してしまうので、歯磨き程度では落とし切れません
ラクトバチラス菌は、過去に治療した歯が詰め物の隙間や奥で二次虫歯を起こしていると増えます
治療しているから大丈夫とは言い切れないのです
深い虫歯があったり、詰め物の境目や歯の溝、あるいは甘いものが好きでいつも口にしている人でもラクトバチラス菌は繁殖します
歯を守る上で大切な、唾液の分泌量や緩衝能は生まれつきの体質もありますが、食事回数とも深い関係があります
食事以外に、のどアメや砂糖入りのお菓子、スポーツドリンクなどの清涼飲料水、砂糖やミルク入りのコーヒー、紅茶をしじゅう口にしている人は高リスクです
回の中が酸性に傾く脱灰の時間を減らしましょう
しかし、PMTC(プロによる徹底した器械クリーエング)を行うとプラークが一気に減ります
その直後からキシリトールー00%のガムやタブレットを上手に利用していくと、ミュータンス菌のレベルをゼロにすることができます
フッ素の使用状況はまだ日本では高いとは言えません
しかし歯質の強化を考えるなら、大人でもフッ素は不可欠です
歯科で定期的に塗布してもらい、毎日の歯磨きの際に、フッ素入りの歯磨き剤と歯科で買えるフッ素ジェルを活用するのが理想です
日本でキシリトールが認可される以前はこうしたテストを受けても、テスト後の対策が不充分だった部分もあったのですが、キシリトールが定着した現在では、虫歯予防の観点から見てとても有効
一度受診することをおすすめします
カリエスリスクテストは自費診療で1万円前後、検査時間は30分ほどです
私のクリニックでは電子枠でプラークの量を計り、より綿密な予防対策を提案しています
その他にも、インターネットで予防に力をいれている研究会名簿(例えば日本フィンランドむし歯予防研究会など)を検索すればお近くの歯医者さんで検査を行っている医院が探せます
【カリエスリスク スコア】次の8項目を検査し、結果をスコア化してクモの巣状のグラフにする
スコア値が内側に入っている項目は、その人の歯の健康の弱点
どこを重点的にケアすべきかがひとめでわかる
スコア全体が大きな八角形を描くほど、「虫歯になりにくい」ということ
ミュータンス菌いわゆる酸を出し、初期虫歯の原因になる菌
生まれたての赤ちゃんの国内には存在せず、母親や周囲の大人から、唾液を通じて感染する
一度感染してしまうと、歯磨きだけでは完全に除去できない
ラクトバチラス菌これも虫歯の原因菌のひとつで、特に虫歯を進行させる菌
かつて治療した虫歯が二次虫歯を起こしていると増える
甘いもの好きの人、ちょこちょこ飲食をする人、歯磨きがおろそかで国内が不潔な人には多い
飲食の回数飲食後、日の中は酸性に傾くので、飲食の回数が多いと、脱灰化の時間が増え、虫歯になりやすくなる
1日の飲食回数は、4回まではOKc食事以外にもドリンクやおやつをしじゅう飲み食いしている人はリスクが高い
プラークの量歯肉の境目に沿ってついている細菌の固まりのこと歯垢とも言う
虫歯や歯周病の原因になるプラークが、どのような状態で付着しているかを調べる
フッ素の使用状況歯磨き時にフッ素のジェルやフッ素の水溶液を使ったケアを行っているか、歯科医師や歯科衛生士によるフッ化物塗布を定期的に行っているかなどをチェック
虫歯の経験(DMFT指数)現在虫歯になっている歯、過去に虫歯によって失われた歯、治療済みの歯の本数をチェックし、虫歯になりやすい環境かどうかを調べる
唾液の量唾液には口内の細菌や食べかすを洗い流す作用、酸性に傾いた国内を中和する作用、再石灰化を促す作用など、虫歯を防ぐためのいろいろな作用がある
唾液の量が多いほど、そうした力が強いことになる
唾液の緩衝能飲食後、酸性に傾いた日の中を中性に戻す「中和力」を指す
緩衝能が低い人ほど、酸性に傾いている時間=脱灰化の時間が多いので、虫歯になりやすいといえる