良い歯医者の選び方1


公開されている情報から講演会などに行くと、決まって質問されるのが、「どうやっていい歯医者さんを見分ければいいか」です
歯が痛くなっても、かかりつけ医がいなければどこに通おうか迷ううち、症状が進行してしまいます
また、転居したばかりのときなど、地域の事情もわからないので非常にとまどうところでしょう
先の質問に、私はよくこうお答えしています
まずは、「よさそうだな」と思った歯医者さんに行って、玄関から受付のところを覗き、歯磨き剤や歯ブラシなどの歯科用商品を揃えてあるかをチェックしてください
いい歯科クリニックは間違いなく予防医療に力を入れています
ですから、歯科用商品はいろいろ用意してあるはずです

助歯科用商品の歯磨き剤や歯ブラシのほか、歯科専売のフッ素の洗口液やジェル、100%キシリトールのガムやタブレット、フッ素付きデンタルフロスなどが揃っていれば合格です
さらにクチコミやホームページをチェックするとだいたいの評判はつかめると思うので、次に予約の電話をしてみます
そのときにまず間違いなく、いい悪いが見分けられる質問力あります
「そちらのクリニックでは歯磨き指導をしてもらえますか」「歯磨きグッズを選んでもらえますか」と聞いてみてください
そこで快くしてくれる歯医者さんは良心的です
予防の重要性をわかっているからこそ、手間のかかる指導や歯科グッズの販売も積極的に取り入れているわけですから
歯周病の治療のための医師を探している場合、「日本歯周病学会認定歯科衛生士」がいるクリニックもおすすめです
歯周疾患の治療には高度な知識と技術が必要で、かつ歯科衛生士の的確なサポートなしにはできません
歯周病治療に、歯科衛生士の存在は欠かせません
認定歯科衛生士の有資格者は全国でまだ700人程度しかおらず、とても信頼されています
いい歯科医院の選び方②問診表、見積表を参考に
大学付属の歯科病院では、初診時に小冊子ほどある何十ページものシート集を渡して記入してもらい、それを治療のベースに使います
開業医ではそこまで徹底するのは難しいですが、それでも治療の指針を決めるためのていねいな問診シートや治療の進行をつかむための計画書を用意するのは不可欠です
ですから、初診時に、間診票がしっかりしてぃる、歯磨き状況などの生活チェックを行う、検査をするなど、教科書的なステップをきちんと踏んでいるかどうかが大切です
追って治療方針の説明に入ります
このときに一つの治療法を示すだけではなく、充分な選択肢を用意して、可能な限りの治療方針を説明してくれる先生は良心的です
私のクリニックでは、大学病院から歯周病、日腔外科などさまざまな専門医が定期的に訪れて診断や治療を行っています
一人の患者さんに対し、専門医がそれぞれの見解を示し、私自身はその診断を見て総合的に判断して、治療方針を立案します
患者さんにすべての治療法を提示し、検討してもらえるよう計画書を渡しています
それを見ながらだと、患者さんもどんな治療をするのか決めやすいようです
治療方法によって治療費は変わりますから、治療方針を決めた後で、実際の治療に入る前に見積書を作ります
最近では少ないと思いますが、治療方針の話し合いや見積なしに治療に入ろうとしたら、患者さんの側から「相談の上で決めたい」とぜひいってみてください
「奥歯は保険内で充分、でも前歯は自費で」など、部位で分けて考えることもあると思います
大抵のクリニックでは保険診療と自費診療の両方をやっていますから、希望を細かく伝え、それに細やかに対応してくれる歯科医師であることも大事です
また、治療したい項日がはっきりしているなら、その歯科疾患の学会認定を受けているのかどうかもひとつの目安になります
あとは、看板も参考になります
歯科医師法で、公道から見える看板には、 一般歯科、日腔外科、小児歯科、歯列矯正の4項目しか掲げてはいけないことになっています
インプラント、ホワイトエングなど看板には書けない項目も治療できるという場合、そのことは待合室やホームページの中に書かれています
いずれにしても、良心的なかかりつけ歯科医を持っておくと、長期にわたり患者さんの歯の健康をサポートしてくれるはずです
いい歯科医院の選び方③専門的な治療をしたいとき
可能であれば、信頼できる歯科医師が勧める歯科医師がいちばんいいように思います
同業者だからこそ、技術や得意分野、人柄、あるいは患者さんとの相性まで考えたうえで、最もよいと思える先生を紹介してくれるという期待がもてます
夫婦、家族と言っても、ひとりひとり日の中の状況は違います
おじいさんおばあさんは入れ歯が得意な先生を探しているかもしれないし、お父さんは歯周病の名医を探しているのかもしれません
目的は虫歯予防なのかホワイトエングなのか審美なのか、それによって紹介するクリニックも変わってきます
ですから、まず歯科のかかりつけ医を持ち、その主治医にいい専門医を尋ねてみて下さ 朗い
また、難しい症例の場合はかかりつけ医のほうから提案してくれるでしょう
とはいえ実際問題として、主治医がいないという方も多いことでしょう
そんなときこそ、インターネットが役立ちます
それぞれの疾患の専門学会があり、多くの学会で専門医や認定医の名簿を公開していますから、ぜひ参考にしてみてください
また通える範囲に大学附属の歯科病院があるときは、利用されることをおすすめします

歯科ドックとは

 

人間ドックにはなじみがあっても、歯科ドックはまだそれほど認知されていないかもしれません
人間ドックが病気の予防や早期発見を目的とした総合健康診断であるのと同様、歯科ドックも、生涯自分の歯を残すための「回の中の総合健康診断」です
歯科ドックはデンタルドックとも呼ばれ、現在の回の健康状態を詳しく診断し、今度の治療やケアの方針を決めていくベースになるものです
虫歯や歯周病になってから慌てて治療するのではなく、トラブルになる前に病気の原因などを除去することもできます
何か国内の病気が発見されても、早期なので多くの治療法から選択できます
治療にかかる費用も時間も大幅に減らすことができるメリットがあります
たとえば、永久歯の中で最初に生える6歳臼歯は、 一生の歯の健康を左右するともいゎれている重要な歯です
6歳臼歯は最初に生えてくる大人の歯であり、その後に生えてくる歯の並びの基準になるのです
一番大きく丈夫なこの歯がしっかりしてぃなくては、きちんと噛めず、栄養吸収や成長に影響してきます
また50歳以降では、12歳臼歯(第二大臼歯)とともに最も失なわれやすい奥歯の一つです
噛み合わせにとって重要な歯ですから、6歳臼歯が抜けることで噛み合わせが悪くなり、そこからほかの歯まで悪くなることも多いのです
6歳臼歯は溝が深く複雑なため、虫歯になりやすいといぅ特徴があります
歯科ドックを受ければ、このような歯の肉眼ではわからないようなごく初期の虫歯でも発見でき、治療に当たれます
しかも、すぐ削るのか、再石灰化治療を施してからMI治療(最小限の歯の切削)をするのかなど、最善の方法を相談しながら決められるのです
まずは歯科相談に出向き、歯の磨き方や、歯の色や形、日臭、噛み合わせの悩みなどを気軽に相談してみましょう
自費診療になるので、歯科相談で30分で3000~5000円程度
歯科ドックは1時間~1時間半ほどかかり、2万円程度が目安になります
歯が原因となって生じる全身疾患はたくさんあります
国内の健康は全身疾患の予防にもなり、究極のアンチエイジングでもあるのです
クリニックによって、基本検査やオプション検査は違います
事前にリサーチして、自分の求める検査を組み合わせましょう

あごの不調は体幹の筋力不足も一因


姿勢と噛み合わせも関係が深く、どういう姿勢で食事をしているかで噛みやすい歯は決まってしまいます
すると、特定の歯に力がかかった状態で噛むようになり、原因不明の歯の不調を引き起こすのです
あるていど筋力をつけ姿勢のくせを直すだけで、噛み合わせのバランスがよくなり、症状が消えることも少なくありません
また、あごの不調は体を支える体幹の筋肉のバランスが悪くても起きやすくなります
体幹の筋肉には、脊柱起立筋などのアウターマッスルと、多裂筋などのインナーマッスルがあり、両者はバランスをとり合って体をまっすぐに支える働きをします
習慣的に行っている運動の中に、ぜひ体幹を鍛えるトレーニングも入れてください
四つんばいになり、手足をあげるエクササイズは、アウターマッスルとインナーマッスルを同時に鍛えます
いずれにしても、血行をよくする、姿勢を正すだけで痛みはかなり軽減されます
私の知人には、万歩計をつけて歩くようになったら、症状がすっかり治ってしまった人もいます
痛みを自覚したら
しばらくは噛みごたえのある食べ物は避け、歩く習慣をつけてください
最低1日7000歩以上
さらに、「歯を守る健康体操」を実践
すると、lヵ月ほどで治ります
こうした生活習慣は予防的な効果もあります
ふだんから取り入れてもいいでしょう

[歯やあごの不調を招く原因チェックリスト]
□休みの日は長く寝ているのが好き
□食べることが好きで満腹になるまで食べないと気が済まない
ロスルメやフランスパンなど歯ごたえのある食べ物が好き
ロスイーツに目がない
□女性の場合、いつもヒールの高い靴を履いている
□普段から歩くのが嫌い
□首をボキボキ鳴らすクセがある
□高い枕で寝ている
□電車やバスで座ると居眠りをする
□よく長電話をする
□座っているとき、足を組んでいることが多い
□立っているとすぐに何かに寄りかかつたり、座りたくなったりする
□歩くとき、ついだらだら歩いてしまう
□寝転がって読書したり、テレビを見ていることが多い
ロストレスを感じると歯を噛みしめてしまう
□体重の変動が大きい
□鼻ではなく口で呼吸しがち
腹式呼吸ではなく、胸で浅い呼吸をしている

当てはまる項目が一つでもあると、有害で、多いほどリスクが増大します。チェックがついた項日は改善するよう心がけましょう。

ストレスが原因で歯が痛くなる


先の姿勢のゆがみなどから来る歯の痛みとはまた別に、少し以前から、歯科医の間で話題になっている症状があります
患者さんは歯の痛みを訴えるのですが、視診や触診、レントゲンなどの検査を繰り返しても虫歯や顎関節症などの異常は見つかりません
治療、抜歯、手術を繰り返しても痛みは改善されず、痛むところに麻酔をしたり、鎮痛剤を処方しても痛みが消えないのも特徴のある症状です
噛み合わせの不具合ではないかと訴える患者さんもいます
噛み合わせ治療を行うと、患者さんは「治りました」と満足して帰って行かれるのですが、しばらくすると、また痛み出したと再来院されます
痛む、治まるの波が何度も繰り返され、それは長期にわたります
このような、原因不明の口腔や顔面部の痛みの場合は、「非歯原性歯痛(歯が原因ではない歯痛との可能性があります
非歯原性歯痛は何種類かに分類されますが、代表的なものが「特発性歯痛(非定型歯痛とです
特発性とは医学用語で「原因不明」という意味です

患者の9割が女性

何かストレスフルな状況に置かれたのをきっかけに、突然、歯や顔面にジンジンじわじわする耐え難いほどの痛みが出るようです
特徴的なのは、痛みがあちこち動くことです
右の歯が痛いと言っていたのに、いつの間にか左側が痛くなったりします
しかも生きている歯だけでなく、すでに神経を取って死んでいる歯も痛むことがあるのです
歯には原因がないにもかかわらず、患者さんは痛いと訴えるので、歯科医師はごくごく小さな国内トラブルを探し出し、不要な治療や抜歯をしてしまうことがあります
歯髄炎や顔の神経痛である三叉神経痛、また感染症である骨髄炎に誤診されることも多く、やっかいです
痛みが治らない患者さんは病院を転々とし、さらに不要な治療を受け続けるケースもあります
「非定型歯痛」のはっきりとした原因はわかっていませんが、脳のセロトニンノルアドレナリンなどの神経伝達物質が関わっているのではないかと言われています
セロトニンノルアドレナリンが不足すると痛みの調整がうまくできず、ささいな刺激にも過敏になります
「非定型歯痛」の治療法はわかっていて、三環系抗うつ剤を適切に処方してもらうと楽になります
しかし、歯科医師抗うつ剤を処方できないので、精神科などと連携して処方してもらうことになりますが、 一般的なうつ病の治療とは違いますので、精神科医にとっては痛みを取るための適正量を判断するのが難しいところです
神経伝達物質不足以外の「非定型歯痛」の原因として、群発頭痛があげられます
群発頭痛の患者は普段はまったく異常はないのですが、1~2年ごとに「群発期」が巡ってきて、lヵ月ほど日から上あごにかけての、各1時間ほど続く激痛発作が連日起こります
急性の蓄膿症(上顎洞炎)、あごやほおの筋肉の痛みが歯痛のように感じられる筋筋膜痛、顔の帯状疱疹なども歯痛と結びつきます
神経内科など他の診療科につなげられるかもポイントです
難治歯の治療を繰り返しても痛みが治まらないのに「原因不明」と言われてしまう場合、オロフェイシャルペインの専門医を受診されることをおすすめします

 

フッ素入リデンタルアイテムで歯を強化

歯磨きの仕上げには、フッ素の入ったジェルや洗口液を使い、歯を強化します
フッ素塗布は歯科クリニックや保健所などでも行う施術ですが、家庭で使うものとして歯科で販売しているジェルタイプの歯磨き剤もあります
研磨剤を含んでいないフッ素ジェルです
歯磨きの後、朝と晩適量を2回歯に塗ると、フッ素イオンが歯にしみこんで虫歯菌に強い歯を作ってくれます
フッ素ジェルにはキシリトールも入っているので、ミュータンス菌を減らすキシリトールの効果も期待できます
しかし中には「効果はわかっていてもジェルをいちいち塗るのは面倒」となかなか習慣として根づかない患者さんもいます
ところが最近になって歯科用になりますが、ライオン歯科材からフッ素入りの洗口液が発売されました
「フッ化ナトリウム洗口液0.1%〈ライオンとというフツ化ナトリウム洗口液です
この製品は従来の粉末を水で溶いて自分でフッ素溶液をつくるのと違い、初めから濃度が450ppm(lppmは0・0001%)のフッ素溶液に調製されていてフツ素ジエルに比べて格段に使い勝手がよいので、いままでジェルを敬遠していた人はぜひ使ってみてください
1日1回、未就学児で5m、小学生以上で7~‐0回ずつ使う洗口液で、就寝前にブクブクとうがいします
あくまでも溶液を歯にゆきわたらせるブクブクうがいとし、のどを洗うガラガラうがいをしないように充分注意してください
液が回全体に広がって歯の隙間にも入り込むよう、30秒間、液を目の中のあちこちにまわしながらブクブクしますo子どもの場合は、誤って飲み込まないよう下向き加減で行います
洗口後は水ですすがないこと
洗回後30分間は飲食やうがいは避けてください
この製品のフッ素の含有量は450ppm
歯磨き粉には薬事法ぎりぎりのフッ素950ppmまで配合されているものもあるとはいえ、洗口液としては充分高濃度です
この洗口液のメリットは、使い方が簡単であることに加え、使用回数が1日1回と少なくて済む点です
1週間に5回使えれば効果があるといわれています.平日の月~金まで使い、上日はお体みできる計算になりますので、ジェルが朝晩2回だったのに比べるとぐんと手軽ですcジェルが3ヵ月に1本程度しか消費しないのに対し、洗口液は、小学生以上ではlヵ月に1本程度使い終わってしまいます
1本当たりの値段も洗口液のほうが高いので、虫歯リスクの高い人や歯列矯正中でリスクが高い時期に限定して使用する方法もおすすめしています
その他、洗口液で注意してほしいのは誤飲です
子どもは誤飲してしまうと嘔吐や腹痛、下痢などフッ素の急性中毒が起きやすいので、歯科医師の指導のもと、大人の監督下で使用してください
フッ素の急性中毒量は、体重1聰あたり2Щ(ミリグラム)とされています
万が一、子どもがうがい中に誤って飲み込んでしまった場合は、牛乳やヨーグルト、カルシウム剤などをすぐに飲み込ませてください
すると体内でフッ化カルシウムになって便として排泄されてしまいます
少量でしたらそれほど心配はありませんが、フッ素は大量に飲み込むと危険です
目を離した隙に子どもが1本飲んでしまったなどということがないよう、扱いには充分注意してください

歯が残っている人ほど、病気になりにくい

自分の歯が残っていて食べ物が咀噛できる「咀噛能力の高さ」が、いつまでも元気で長生きという「健康寿命」にとっていかに重要かをお話ししました
それと同時に、歯が健康な人は医療費も安くすむという報告があります
全国のさまざまな自治体が行った調査では、歯の残存数が多い人ほど全身の疾患にかかる医療費が少なく、また入院日数や通院日数も少ないという結果になっています
自治体によって、調査対象年齢は50歳以上から80歳以上までと幅広いのですが、一局齢になるほど歯が残っている人と残っていない人ではかかる医療費の金額の差は広がり、特に入院日数については格段の差があります
兵庫県歯科医師会の研究によると「歯が多く残っている人は、少ない人より入院日数が26%短い,また医療費は14%少ない」ということです
これは、歯の健康を保つモチベーションになりうるニュースでしょう
前でも述べたように、歯を失うと栄養摂取のバランスや質が悪化してしまい、これが全身の健康に悪影響を及ぼします
あらためて後述しますが、歯周病は歯肉や歯槽骨など国内にダメージを与えるだけでなく、動脈硬化心筋梗塞などの心臓血管疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームなどさまざまな全身疾患のリスクを高めることがわかっってきました
歯周病によって歯を失えば、当然そうした治療費負担も増えてしまいます
また、骨粗霧症は高齢者によく見られる病気ですが、骨代謝と歯の残存数とは比例していて、骨密度が低いほど歯の残存数も少ないという統計が出ています
また、残っている歯が少ない人はど骨密度が低くなるため、寝たきりや要介護のリスクが上がり、その治療費や介護費なども増えると考えられます
歯の健康と全身の健康の関連が、医療費という形でも証明できたわけです

免疫力をアップし、がんも予防

歯が丈夫だとものがよく噛め、消化吸収にかかる胃腸の負担が減ります
「私は胃腸は丈夫だから噛まなくてもいいや」と考えるのは間違い
胃壁から分泌される胃液は強力な酸です
食べ物が胃に入るとその胃液や消化酵素で分解していきますが、食べ物が細かく噛み砕かれていれば、胃壁が消化のための酸を浴びる時間が短くて済みます
また、日本人の小腸の長さは6、7メートルありますが、その腸には無数のひだがあります
腸壁やひだをならすと、その表面積はテニスコートー面分ほどの大きさになると言われ、そこにはびっしりと免疫機能を備えた細胞が詰まっています
それを腸管免疫と言い、体にとって有害な病原菌や化学物質を排除するのですが、消化吸収の負担がかかるほどに腸管免疫はダメージを受け、機能が弱まります
腸は体の中でもっとも大きな免疫器官ですから、全身の健康にも関わってきます
そのように、噛むことをおろそかにすると免疫力に影響が出て、がん細胞の抑制もうまく効かなくなります

若さを保ち代謝を活発にする唾液のパワー

よく噛むことは、内分泌系のアンチエイジングにもなります
唾液はよく噛んで食べると分泌量は10倍になるといわれます
唾液のほとんどは水分ですが、微量に含まれているさまざまなホルモンや酵素が重要な役割を果たします
日本では1930年代から、唾液ホルモンの研究が始められていました
東京大学病理学の緒方知二郎教授のグループが、耳下腺から分泌される「パロチン」という唾液由来のホルモンを発見したのです
一方、アメリカでもこれと同時期か少し後に、唾液に含まれる成長因子に着目した研究が始まっていましたcネズミから唾液腺を取ると、歯や毛のつやなどに悪い影響が出ます
身体を覆う皮膚の表層を「上皮細胞」と言いますが、歯や髪の毛もこの上皮細胞が変化したものです
胃や腸の粘膜や血管も同系の細胞
スタンレー・コーエン教授は、唾液腺の中に全身の皮膚や骨、血管、粘膜などあらゆる細胞の新陳代謝を促す「上皮成長因子」があることをつきとめました
さらに、コーェン教授の共同研究者リタ
レヴイ
モンタルチーニ教授は、唾液腺の中の「神経成長因子」の発見者
神経成長因子は神経細胞の成長やシナプスの機能九進など、脳細胞の成長を促します
この研究により、ふたりには1986年にノーベル生理学
医学賞が贈られています
実はその上皮成長因子と神経細胞因子など多数の生理活性物質(ビタミンやアミノ酸が作り出すホルモンなど微量で体の働きを調節する物質)を合む混合物が、「パロチン」という唾液ホルモンだったのです
また、唾液に含まれるペルオキシダーゼには、発がん物質によってできる活性酸素を減弱させる働きがあることがわかっています
噛むだけでアンチエイジングなんて虫のいい話に聞こえるかもしれませんが、噛む動作が全身のさまざまな機能活性を促すと説明してきましたc若さを保ち代謝を活発にする、人体に有益な成分がたくさん含まれている唾液のパワーを使わない手はありません
ちなみに、コンビニで売っている食品を10gずつ食べるのに何回噛むかを調べると、プリンで8回、パンで100回、おせんべいで160回、そしてガムは550回以上という結果になりました
噛みごたえのある食べ物を意識して食べるのも大切ですが、たとえ柔らかいものでも「よく噛んで食べる」ことで唾液分泌を増やすことができます
栄養素を効率よく摂るならサプリメントでもいいような気がしますが、唾液のメリットを考えれば、噛まないサプリメントを食事代わりにするのはおすすめできません

歯周病は歯肉や骨を破壊する病気


「歯を失う最大の原因である歯周病は、歯肉や歯槽骨、歯根膜などの歯を支える組織が冒される病気です」と日本歯科大学歯周病学教室の沼部幸博教授はいいます
歯と歯肉の境目には、0・5~2皿程度の隙間が誰にでもあります
これを歯周ポケットといいます
この歯周ポケット内にプラークや歯石がたまって、その中に棲む歯周病菌から放出される毒素によって炎症が起き、歯肉が赤く腫れている状態が歯肉炎です
この段階では歯周ポケットの深さも2~3皿程度で、歯磨きをすると少し出血するかもしれませんが、歯を支えている歯槽骨は失われていません
磨き残しがないように歯磨きを徹底したり、専門家による歯のクリーニングであるPMTCを受けるなどのケアで比較的早期に健康な歯肉に戻すことができます
ところが、歯周病の前段階である歯肉炎を放置しておくと、歯周病菌は歯周ポケット内の接合上皮という歯と歯ぐきの接着部分を破壊して、さらに奥へと入り込んでいきます
歯根膜や歯を支えている歯槽骨まで溶かしながら進行し、炎症を悪化させますcそぅなると歯肉が下がってきて歯が長くなり、歯がぐらぐらしてきます
やがて歯槽骨の支えを失った歯がついには抜け落ちてしまうこともぁります
歯周病菌は嫌気性菌(酸素が存在しない環境を好む菌)なので、狭くて深く酸素が少ない歯周ポヶットは恰好の棲み家
深さ3mm以上に達した歯周ポヶットの奥で、歯周病菌は歯肉からにじみ出た血液や唾液成分から栄養を取り込み、「歯肉縁下プラーク」ゃ「歯肉縁下歯石」をつくります
歯周病を進行させる真犯人は、これら歯肉縁下に棲む歯周病菌から出る毒素です
歯周病の代表的なものが「慢性歯周炎」です
35歳以上の成人に多いですが、子どもや若い世代でもかかることがぁります
歯は、歯槽骨の四つの壁によって、噛み合わせの面が支えられている五面の立体です
一般的な歯周病は「三壁性影郊託」といつて、壁のどこかの一面でも4皿以上の歯周ポヶットがあればそう診断されます
三壁性とは、残っている健康な壁の数をさしています
日本人のほとんどの歯周病はこの三壁性骨欠損です
初期には痛みなどの自覚症状もなく、発生もゆっくりです
しかし一旦発症すればゆるゆると進行します
まれではありますが「侵襲っば歯周炎(急速破壊性歯周炎とと呼ばれる歯周病もあります
プラークの他に自血球の低下など別の因子があって、通常の歯周病より急速に進行します
以前は若年性歯周炎と呼ばれていたように、10歳から30歳程度の若い世代に多く見られます
歯周病患者のうち、「侵襲性歯周炎」のような重歯周病患者さんたちは1割程度と多くはありませんが、三壁性ではなく全部の面が一気に下がっていくのが特徴です
この病気にかかる患者さんの年齢は概して若いため、本人やご家族には深刻な影響を及ぼします
大学病院の歯周病科などで、専門医の診断を受けられることをおすすめします

 

歯間ブラシの使い方には注意が必要

歯間掃除アイテムには、歯間ブラシもあります
歯問ブラシのほうがフロスより手軽に使えるのですが、そもそも歯間ブラシは、ブリツジなど歯が抜けたあとの被せ物の歯と人工歯の間の掃除や、歯周病が進行して、歯と歯のすき間が非常に大きくあいた場所や必要があって被せ物を連結してフロスが通らない場所などに使うものです
歯も抜けておらず、歯周病もないような人が使う道具ではありませんから、その点を誤解しないでいただきたいと思います
しかも、無理矢理通そうとすれば、本来の歯間より大きいサイズでも入ってしまい、歯と歯ぐきの境日が下がってかえって歯間を広げてしまう危険もあります
歯間ブラシを使えるのは、そのサイズのブラシがすっと通るくらい歯間があいている人や、ブリッジなど連結した被せ物が入っている人、進行した歯周病の方、専門家から使用を勧められた人などです
自己判断で使うのはやめましょう
またいずれの場合も、前歯に使うのは避けましょう
一度下がった歯肉は、ほとんどの場合戻る可能性が少なく、審美的な問題を引き起こす恐れがあるからです
使用は、奥歯にとどめ、前歯ではフロスを使うようにしてください
歯間ブラシはサイズ選びも含め、歯科医師や歯科衛生士の指導のもと、使用するのが望ましいです
市販品で選ぶなら、自然にすっと歯間に入る小さめのものを選びます
現在は、4S(最小SSSS)から3L(最大LLL)までさまざまなサイズがあります

歯周病患者の心筋梗塞・狭心症リスクは2倍以上


歯周病は、脳梗塞や冠動脈疾患(心筋梗塞狭心症)、動脈硬化症などとの関連が注目されていて、歯周病患者の冠動脈疾患のリスクは、歯周病でない人に比べて2~3・6倍あるという研究結果があります
歯周病を持った心疾患患者の血管内から歯周病菌が見つかつたという報告があります
これらの心臓病は、動脈に血栓が発生して血管が詰まります
その危険因子として挙げられるのは、高血圧や高脂血症、糖尿病、喫煙、肥満、そして歯周病です
歯周病菌の血小板凝集作用(血液中の血小板を固める作用のこと)が血栓形成を促進し、心臓血管疾患を起こしやすくしてしまぃます
そのほか、心臓内部の弁や心内膜が血液中に入り込んだ歯周病菌に感染すると、「細菌性心内膜炎」を引き起こす可能性があります
これは敗血症などの原因となり命にも関わる病気です

 

虫歯予防、歯周病予防のための「PMTC」


これまで見てきたように、虫歯や歯周病の発症はプラークの有無がひとっのポイントになります
歯の表面や歯と歯肉との境目に付着したプラークは、やがてスクラムを組んでバイオフイルムを形成します
さらに唾液中のカルシウムやリン酸などを取り込み、より強力な歯石を作ります
プラークはしっかりと歯磨きすれば落とせますが、バイォフィルムや歯石になると歯磨き程度では落とせません
ですから、虫歯や歯周病の予防には、「PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニングごという専門家による歯のクリーニングがとても有効です
歯科医や歯科衛生士が専用機器で、普段の歯磨きでは落とせない汚れまで落としきります
PMTCならプラークはもちろん、虫歯菌のつくるバイオフィルムや歯石も徹底的に落とせ、ステイン(コーヒーやワインなど食べ物による着色汚れ)もきれいになります
PMTCではまず「赤染め液(歯垢染め出し液とで、磨き残しやプラークのたまっている場所を見つけます
バーカップと呼ばれる柔らかいゴム製のカップにフッ素入りの微粒子研磨ペーストをつけ、器械で歯を磨き上げていきます
先ほどの磨き残し部分や、歯と歯の間、歯の根元などは専用器具やフロスなどを使って特に重点的に清掃します
歯垢がつきにくいよう、歯の表面がつるつるになるまで研磨したら、きれいにすすぎます
最後に再石灰化を促すフッ素を塗布して終了です
治療はおよそ1時間、費用の目安は1万円ほどです
痛みはありませんし、 一度体験すると日の中がさっぱりしてやみつきになる人もいます
PMTCは定期的に行うことで虫歯予防だけでなく、歯周病予防にも効果があります
歯の自然な白さも保てますので、メリットの高い治療だといえるでしょう

受け口は遺伝する

ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、ヨーロッパの名門ハプスブルク家は、受け回の家系として知られています
上あごの骨より、下あごの骨の発育が過剰、あるいは過成長すると受け口になってしまいます
肖像画を見ると確かに、カール5世やフェリペ4世などは、この特徴が際立っています
受け口を専門用語では下顎前突や反対咬合といいますが、骨格性の受け回の多くはこうした遺伝によって起こります
ほかに骨格異常がもたらす成長期の骨の発達が原因となる場合もあり注意が必要です
骨格異常による受け回は、次のように形成されます
手足や身長を伸ばす長骨(長管骨)という骨があるのですが、代表的なのは上腕骨や大腿骨です
この長細く伸びた骨の幹の部分を「骨幹」、両端のややふくらんだ部分を「骨端」と呼び、骨幹と骨端の間の軟骨が伸びて、成長するのです
この長骨と下あごを成長させる骨は同じ種類の発育をたどります
長骨は骨の両側の細胞が増殖し、伸びていきます
あごの場合は、Uの字型のままサイズが大きくなっていくわけで、身長が伸びる成長期に進行します
背が10m伸びると下あごが6皿伸びると言われていて、女子に比べ背が高くなる男子のほうが深刻になりやすいのが特徴です
というのも、女子の身長は15~‐6歳で伸び止まることが多いので矯正治療も、その時期で終了にできます
ところが男子の場合は、22歳くらいまで身長が伸びるので、中学生くらいで、いちどきれいに改善しても、大学生くらいでさらに下あごが発達してしまう可能性があります
こうなると下あごの骨を削る外科治療が必要になることもあるからです

 

キシリトールが効く理由

なぜ、母親がキシリトールを摂取すると、子どものミュータンス菌の感染率が下がるのでしょうか。
これは、妊娠中から生後9ヵ月になるまでに母親が摂ったキシリトールの効果で、母親の口の中のミュータンス菌が「不溶性グルカン」を産生しなくなり、プラークが歯からはがれやすくなったためと推察されます。不溶性グルカンは、ミュータンス菌が糖をエサにしてつくる不溶性のネバネバ物質のことです。
その結果、子どもの日の中にミュータンス菌が感染しても定着しにくいという現象を導いたといえます。大人の場合も同様で、キシリトールにより不溶性のネバネバ物質をサラサラなタイプに変えるので、口の中にミュータンス菌が定着しにくくなります。
ミュータンス菌は産道感染や空気感染はしませんので、生まれてきた子どもに早期にうつさないためには、母親の国内環境が重要です。この時期に育児に関わっているのは、世界的にみても母親が多いため、父親や祖父母より、やはり母親の影響が大なのです。
生まれてくる赤ちゃんの歯の健康のためにも、PMTCという歯科医院でのクリーニングや、フッ素入りの歯みがき剤やキシリトールガムなどを活用して出産前からミュータンス菌の数を減らしておきたいですね。
子どもの歯の健康のために大切なもうひとつの点は、母親自身の栄養管理、健康管理です。
実は赤ちゃんの歯は妊娠6週目くらいからできはじめていて、生まれるころには歯ぐきの下に歯胚という歯の芽が待機しています。妊娠4ヵ月ころは赤ちゃんの歯の石灰化が始まる大切な時期と言われます。
赤ちゃんのあごの骨や歯をつくるのは母親からの栄養ですから、この時期にバランスのいい食事で充分な栄養を摂らなかったり、体調管理をおろそかにすると、生まれてくる子の歯のエナメル質が形成不全をおこすなど、悪い影響を及ぼします。
一般的に日本人はカルシウム摂取量が低め。妊婦の方以外も歯の健康のためには、不足しがちになるカルシウムなどがたっぷり摂れるようバランスを考えながらよく噛んで食事をすることが大切です。
カルシウム摂取を意識すると同時に、カルシウムを歯や骨に吸収させるのに欠かせないビタミンDの存在も忘れないでください。
ビタミンDしらすや鮭、いわしといった魚類に多く含まれています。また、食べ物からだけでなく、日光に当たることで皮下でビタミンDを生成します。
しかし、骨密度を上げて丈夫な歯槽骨を維持するには、カルシウムとビタミンDに加え、適度な運動をして継続的に骨への適度な負担をかけることが不可欠です。
運動をすると骨の中の血流量が増えて、骨をつくる細胞が活性化され、反対に骨の溶解は抑制されます。
つまり目光を浴びながら適度に散歩をするのは、カルシウムの吸収を助ける上で理にかなっています。

フロスを活用して、完璧に汚れを落とす


いくら歯ブラシでていねいにブラッシングしても、歯と歯の間、歯と歯肉の境日にたまった歯垢までは落とせません
歯ブラシだけで落とせるのは80%くらい
歯間や歯肉の境目にたまっている20%の汚れ落としに活用してほしいのがフロスです
「ブラッシング十フロツシング(フロスごが、歯磨きの基本なのです
ブラッシングが終わったら、フロッシングに移ります
ブラッシングの前にフロッシングをするよう勧める歯科医師もいるのですが、フロッシングを先にすると歯間の汚れがたくさん残っている状態なので、掻き出しても掻き出しても食べ残しなどが出てきます
すると、トータルな歯磨き時間が長くかかってしまいますので非効率的です
先にブラッシングをし、ある程度歯間の汚れを落としておくとスムーズです
また、歯磨き剤を先に使いフッ素の泡がたっぷりと国内にある状態でフロスを使ったほうが、歯間にもフッ素を行き渡らせることができます
そうした二つの理由から、ブラッシング↓フロッシングの手順をおすすめします
フロスは細いナイロン繊維をより合わせた束を糸状にしたものです
歯と歯肉の間の汚れを掻き出し、虫歯予防だけでなく、歯肉炎や口臭の予防にも役立ちます
フロスを30~40mくらいの長さで切り、両手の中指に10~15皿くらいの幅で巻き付けます
両手の親指と人差し指で調整し、1~3mの間隔でぴんと張ります
歯と歯の間の側面に沿ってゆっくリフロスを通します
1ミリ程度歯肉下まで入れると、フロスが少し隠れるような格好になります
そこから、フロスを前後させて汚れを掻き出していきます
すべての歯の隣接面を、フロスを少しずつずらしながら、新しい部分を使って掃除していきます
フロスは、慣れないうちは少し難しいかもしれませんが、歯科医院でもフロスの使い方の指導をしています
フロスよりやや幅の大いのがデンタルテープです
一度にフロッシングできる範囲が広くなります
歯と歯のすき間がゆるい人ではデンタルテープが適しています
選べないときは、歯科医や歯科衛生士に相談してみましょう
歯列矯正中の人でワイアが入っている人では歯ブラシ同様、フロスも「ソートンスーパーフロス3inl」という矯正専用アイテムを使ってください
フロスは、歯科用商品の「ジョンソン・エンド・ジョンソンデンタルフロスフッ素配合ミント」などの「フッ素付き」のものがベストです
市販品であれば、ノーヮックスのものよリワックス付きのものが使いやすいでしょう
糸を指に巻き付けて使うタイプが一般的ですが、慣れないうちは柄の付いている糸ようじタイプを使っても構いません